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野山の彩り 山野草Web写真集 深谷利彦
四季の彩り

霜を纏ったスカシタゴボウ 碧南市

スカシタゴボウは田んぼの縁など湿り気のある場所に生える2年草。
春に黄色い小さな花を咲かせるがお世辞にも魅力的な花とは言い難い。
しかし冬のスカシタゴボウの姿は一変する。
気温が下がってくると葉は次第に茶褐色を帯びるようになってきて
霜の降りた日にははっと息をのむ美しさになったりもする。
写真はそんな場面を切り取ったもの。
霜というディティールがこんなにも美しく変身させるのかと感嘆する。


色づくアキカラマツと朝露 岡崎市

霜の撮影には矢作川に出向くことが多い。
それは自宅周辺より植生が豊かであることから。
アキカラマツもそれなりに生えていて冬には葉が黄色く変化してくる。
そんな時に真っ白な霜が降りれば私の大好きな場面となる。
そんなアキカラマツの霜の様子を撮影し終えてさあ帰ろうかと思った時
すっかり霜が溶けて水滴がびっしりついている葉を見つけた。
普段霜の撮影は広角レンズを使うことが多いが
この場面はマクロレンズで水滴をクローズアップしてみたくなった。



霜 ギシギシとヤエムグラの競演 碧南市

ギシギシとヤエムグラ。どちらも花の時期にはほとんど撮影することがないのに
冬になると最もよく撮影している野草となる。
それだけ美しく魅力に富む野草だ。道端に生える雑草的な存在なのに、
これだけ私を虜にさせるのは霜というディティールなしには語れない。
どちらも霜を纏うことによってその魅力が引き出される。
ヤエムグラはまるで花のように見えるし、
ギシギシは色づくグラデーションの色合いもいいし、
波打つ葉が白く縁取られるのも魅力的だ。
その二つが一緒にあればさらにその魅力が増大する。


ヤブツバキ 愛知県武豊町

冬から春へと向かおうとする頃にヤブツバキの花が咲く。
野に咲く花が少ない時期なので鮮やかな紅い花は気持ちを和ませてくれる。
とても美しい花なのに突然ぽたっと花を落とす。
潔いと言えば潔いがもう少し木に留まっていてもよさそうなのにと
おせっかいを焼きたくなるほど
綺麗な花のまま花を落とす。
なのでその落ちた姿もまた美しい。


下の写真はそんな様子を撮影したもの


落花 ヤブツバキ 武豊町




セツブンソウ 滋賀県伊吹町

スプリングエフェメラルの一つセツブンソウ。
名前のように節分の頃に花が見られる場所もあるが
実際には3月に見頃を迎えるところが多い。
毎年セツブンソウを求めて何ヶ所かお気に入りの場所を巡っているが
この場所が最もお気に入りの場所。
ロープが張られて保護されている訳ではなく
自然のままにあるがままの姿を見せてくれる。
なので毎年同じようには咲かない。
よく咲く年もあれば咲かない年もある。
だからこそよく咲いてくれた時の感動が大きい。


キクザキイチゲとカタクリ 新潟県坂戸山

新潟県南魚沼市にある標高634mの坂戸山。
カタクリの多い山と聞いて登ってみたら
噂通りにどこを歩いてもカタクリが咲いていた。
私の住む愛知県ではカタクリの咲く場所はどこもロープが張られていて
保護管理されている。
愛知県では貴重な植物なので保護されるのは頷けるが
カタクリ以外の他の植物がほとんど見当たらないのが不自然で
あるがままの風景とは言い難いところに不満も残る。

初めて坂戸山を歩いてみてカタクリの多さに驚いたが
それよりも他の植物と混生する景観の美しさに魅了された。
写真はキクザキイチゲと咲くカタクリのお花畑。
こんな場面があちこちにあった。



オオバキスミレとカタクリ 新潟県

愛知県に住む私にとってはオオバキスミレは憧れのスミレの一つ。
日本海側の雪の多い地方に出かけないと見られない。
ところが新潟県まで足を運ぶとオオバキスミレはごくごく普通に生えるありふれたスミレとなる。
山地周辺の田んぼの土手に咲き里山の斜面が黄色く染まっているところもあちこちで見かける。
カタクリも一緒に咲いていたりもするからたまらない。


クモイコザクラ 鞍掛山

サクラソウの仲間は美しい花を咲かせるものが多い。
その中でも特に美しい花を咲かせるクモイコザクラ。
これまでいろんな場所でクモイコザクラを観察したが
鞍掛山のものが最もお気に入り。
山の岩場の隙間に根を下ろして咲く姿は感動的に美しい。
登山口から数時間歩かないと見られない高嶺の花だが
一度は見ておきたい花だ。


ホテイラン 八ヶ岳山麓

ランの仲間は近年自然環境の変化や盗掘などで激減しているのが実状。
もう一つ大きな要因はカメラマンによる踏み込み。
咲いている花に対しては注意を払っても
これから咲くものや何年か先に花を咲かせる若い株などを踏みつけていることが多い。
私もカメラマンの一人として肝に銘じているが
撮りたくなるような綺麗な花が咲いていると
ついつい踏み込んでしまいたくなる。
そんな時はそばに近づくのではなく望遠レンズで優しく狙えばいい。
貴重な植物がいつまでも咲き続けられるように見守ってあげたい。

さてホテイラン。
この妖艶な姿を見ると不思議な感覚になってくる。
どうしてこんなにエキゾチックな姿なんだろう?
どうしてこんな色彩なんだろう?
不思議な魅力がいっぱい詰まっているホテイランを
いつまでも見続けられるようにしたいものだ。



チングルマと白馬大池山荘

夏山の魅力は何と言っても高山植物。
短い夏の間に入れ替わり立ち変わりながら咲く様は感動的に美しい。
私はこれまでいろんな山に高山植物を求めて登ってきたが
最もよく登った山が白馬岳。
ルートは色々あるが一番お気に入りのコースが蓮華温泉から登るルート。
花が多く比較的登山者が少ないのもいい。
写真は白馬大池の池畔から撮影したチングルマと白馬大池山荘。
僅かではあるが白馬大池も写っている。
白馬大池の周辺には高山植物が多く
チングルマだけでなくハクサンイチゲ、ハクサンコザクラ、イワカガミ、アオノツガザクラ、
イワイチョウ、タテヤマリンドウなどのお花畑も広がっている。
この中でチングルマは花期の早い高山植物。
雪解けとともに咲き始めるので夏山シーズンの頃には花が終わって
華穂となっていることも多い。
だからこそ最盛期のチングルマに出会えた時の喜びが大きいのかもしれない。



ミヤマアズマギク 八方尾根

ミヤマアズマギクを初めて見たのは白馬岳
キクの仲間なので図鑑で見ていた時はあまり新鮮さを感じる花ではないと思っていたが
実際に見るとそれはそれは息をのむ美しさで
たちまちのうちに魅了されてしまった。
白馬岳では大きなかたまりとなって咲く場所がいくつもあって
しかも稜線に咲くので山の景観もよく
これが高山植物の魅力なんだと思ったことが思い出される。
写真は八方尾根に咲くミヤマアズマギク。
白馬岳のようなゴージャスに咲く場面は少ないが
こんな風に稜線沿いに楚々と咲く光景は
また別の意味で魅了される。

エゾリンドウ 入笠湿原

長野県にある入笠湿原は私のお気に入りの場所。
6月から8月までの3ヶ月がよく出かけるシーズンだが
いつ出かけても花が多く被写体に困ることはない。
最もお気に入りのシーズンはサワギキョウの咲く8月中旬だが
写真は9月上旬に訪れた時のもの。
エゾリンドウが終盤だったが
その枯れ行く過程の色合いが美しく夢中で撮影したのを覚えている。
花は盛りだけが美しいのではなく
枯れ行く過程も美しく輝くことをエゾリンドウから教えてもらった。



イヌタデ 長野県白馬村

毎年季節を変えて訪れている長野県の白馬村。
白馬岳や八方尾根など山登りに興じることも多いが
山登りだけでなく里に咲く花も美しいので
車中泊をしながら朝には白馬村の道端散策を好んで楽しんでいる。
写真は9月中旬の白馬村で田んぼ脇で撮影したもの。
イヌタデの紅色と刈り取り前の稲の黄金色が妙に美しく
徐に切り取ったもの。
どこにでもあるような風景だが
白馬村だからこそ撮れた写真とも言えなくもない。



鏡池紅葉 戸隠

キャンプに夢中になっていた頃
戸隠へは毎年GWの休暇を利用して出かけていた。
ほとんど毎年のように出かけていたように思う。
キャンプが目的とは言え野草も豊富な場所なので
ミズバショウやリュウキンカやキクザキイチゲなど早春の花を撮影するのも
目的の一つだった。
初めの頃は鏡池に寄ることもなくキャンプ場周辺をのんびりと散策する程度だったが
初めて鏡池を訪れてみた時
もっと早く寄れば良かったと思ったほど。
森の中に静かにたたずむ鏡池はほどよい大きさで周囲を散策できるコースもあって
野草だけでなく森の豊かさに魅了される場所だ。
写真は紅葉も美しいのではと思って秋に訪れた時の写真。
期待通りの紅葉に何枚も何枚もシャッターを押した。



マメグンバイナズナ紅葉 碧南市

私が最も多くカメラを向ける場所が自宅周辺の田んぼ道。
珍しい野草があるわけでもなく絵になる景観が広がっているわけでもない。
米と麦と大豆が輪作される田園地帯が私のフィールド。
珍しい野草がなくても普段から身近な野草と向き合っていると
それぞれの野草の持つ魅力が見えてくる。
写真はマメグンバイナズナが紅葉した様子。
花も少し残っていて絶妙な紅葉のグラデーション。
こんなのが見つかるのも普段から
身近な野草と向き合っているお陰かもしれない。



夕日とコセンダングサ 高浜市

たまにはフォトジェニックな写真をと思って撮ってみた夕日とコセンダングサ。
思い通りの写真になったわけではないが
夕暮れ時の雰囲気は伝わるのかなと思う。
エノコログサやセイタカアワダチソウなどでも同じような写真を試みてみたが
同じように撮れる夕日に巡り合えることがなかなか難しい。


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